2022年09月29日

【質問】指の変形性関節症と診断されました

朝起きると両手の指が硬くなり、痛みを感じることがあります。 整形外科の医師には、「変形性指関節症だろう」と言われました。 今はそのままにしていますが、時々、痛みがひどくなることがあります。 治療は必要でしょうか?
●60歳代:女性



【答】

指が硬くなり「変形性関節症」を疑われたようですね。 変形性関節症は、関節の表面を覆う軟骨が摩耗する病気で、関節の動きが制限され、痛みが生じます。 膝に起こることはよく知られていますが、指も非常に起こりやすい部位です。 また、軟骨の摩耗とともに、関節のへりに骨棘と呼ばれる骨が形成されて硬いコブ(結節)のようになり、指の節が太くなります。 指の中でも変形性関節症が生じる部位によって、ニックネームのような名前が付けられています。 爪に一番近い関節(DIP関節)に起こるものは「ヘパーデン結節」、 その次の関節(PIP関節)に起こるものは「プシャール結節」と呼ばれます。 指の変形性関節症は、40歳代以降、年齢が上がるにつれ増え、男性より女性に多いのですが、誰にでも生じる可能性があります。

ご質問では「朝起きると指が硬くなる」とのことですが、変形性関節症以外に「ばね指」といわれる 腱鞘炎や、 あるいは変形性関節症と腱鞘炎の合併の可能性もあります。ばね指も中年以降の女性に多く起こります。 指を曲げる屈筋腱は腱鞘と呼ばれるトンネルを通る構造をしていますが、腱と腱鞘の間で起こる通過障害がばね指です。 手のひらに痛みが出たり、指が動きにくくなったりします。典型的な場合は、指をしっかり握った後にスムーズに伸ばせずに指が跳ねるようになるため、 「ばね指」と呼ばれます。朝は体がむくんでいることもあり、症状が強く出やすくなります。

指の変形性関節症の経過には個人差があります。放っておいても数年の間に痛みがなくなってしまうこともある一方で、 半数弱の人では5年たっても痛みが続いています。 日常生活における注意点としては、関節が不安定なヘパーデン結節の場合は、手を使う作業をする際にテーピングで固定することをお勧めします。 DIP関節は固まってもあまり支障はありません。 反対にプシャール結節の場合、PIP関節の動きは手の機能に重要なので固定はせず、お風呂で温まったときなどに指を曲げ伸ばす運動をして関節が固まらないようにします。 また、関節がパンパンに腫れあがって痛む場合は、強い炎症が起きている可能性があるので、病院を受診して相談してください。 ばね指の場合は、指を反り返らせるようなストレッチを心がけるとよいと思います。 強い痛みが続く場合には、整形外科や手外科を標榜する病院を受診してください。 少し痛みますが、腱鞘内にステロイドを注射することで、症状はかなり楽になります。

(この答えは、2017年7月現在のものです。医療は日々進歩しているため、後日変わることもあるのでご了承ください。)


posted by bishamon at 20:00| Comment(0) | 整形外科

2022年09月25日

【質問】肩の「腱板断裂」の治療について教えてください

2年前に「腱板断裂」により左肩の内視鏡手術を受けました。 経過は順調ですが、右肩も手術を勧められています。 術後の痛みがつらかったことや、現在、右肩はそれほど痛みがなく、動きにも大きな支障がないので、できれば手術はしたくないのですが、 手術以外に治す方法はないのでしょうか。
●58歳・男性
●利き手は右手



【答】

腱板は上腕の骨頭を覆っている筋肉や腱の総称で、肩関節の安定性を保つ働きをしています。 この腱板の老化に伴う変性を基盤として、牽引・摩擦などの物理的ストレスが加わって生じるのが「腱板断裂」です。 外傷で発生するのは一部で、大部分が日常的な軽微なストレスの繰り返しにより生じます。 60歳以上では4人に1人程度に腱板完全断裂があるといわれていますが、痛みや運動制限などの症状を有しているのはその2〜3割に過ぎません。 それは多くの場合、腱板断裂がゆっくりと進行し、断裂が棘上筋腱にとどまることが多く、他の筋肉で代償が可能であることなどが関係していると考えられます。 しかし、断裂した腱板は自然治癒する可能性が低く、断裂サイズは拡大する傾向にあります。 断裂の拡大やどの程度の自覚症状が生じるかは個人差や左右差があり、一様ではありません。 また、自然経過や保存療法により、断裂が残ったまま自覚症状が軽減したり消失したりすることもありますが、 利き手側や60歳以下の若い実労働年齢の方、作業労働、スポーツ活動、インピンジメント微候、外旋筋力低下などがある場合、自覚症状が残りやすいといわれています。

腱板断裂の保存療法としては、非ステロイド性消炎鎮痛剤などの内服・外用薬の投与、関節内注射、理学療法などがあります。 また、夜間痛の軽減に有効なプレガバリンやトラマドールなどの慢性疼痛治療薬も使えるようになりました。 ただし、保存療法は炎症の軽減や除痛、機能回復を図るものであり、断裂は残存するため、いったん症状の軽減が得られても再燃や断裂の拡大の可能性があります。 一方、手術療法は、内視鏡下または直視下に断裂した腱板を修復するので確実な治療方法です。 短所として麻酔や手術によるストレスが加わること、術後2〜3ヵ月頃まで術後の疼痛を生じること、術後のリハビリテーション期間が長いことなどがあります。 ご質問者は、左肩の術後経過が良好とのことですから、年齢も若いので右肩も手術で腱板を修復しておくのが確実と思いますが、 今のところ症状が軽微なため、手術をしたくないのも理解できます。 そこで今後の対応については、注意深く経過観察し、疼痛・運動制限などの症状が進んだ場合や、3〜6ヵ月ごとにMRIまたはエコー検査で断裂サイズを確認し、 短期間に拡大する場合に手術療法を選択されるというのが妥当な線と思われます。 担当医と十分に相談されることをお勧めします。

(この答えは、2017年4月現在のものです。医療は日々進歩しているため、後日変わることもあるのでご了承ください。)


posted by bishamon at 19:00| Comment(0) | 整形外科

2022年09月24日

【質問】妊娠を機に血圧が高くなりました

7年前、長女を妊娠した際に、「妊娠中毒症」になり、高血圧と足のむくみで立つこともできないほどでした。 出産後も症状が改善しないまま、2年後に第2子を出産しました。その後5年経ちましたが、血圧は高いままで、収縮期血圧が150mmHgあるときもあります。 足も膝から下がむくみ、脛を指で押すとくぼんで、しばらくは元に戻りません。 子育てや父の介護で十分な睡眠時間が取れないのが原因ではないかと思っているのですが、何か病気が潜んでいるのではないかと気になっています。
●40歳代・女性



【答】

「妊娠中毒症」は、現在、医学用語としては「妊娠高血圧症候群」と病名が変わっており、妊娠20週以降、分娩後12週まで高血圧がみられる場合、 または、高血圧にたんぱく尿を伴う場合に、妊娠高血圧症候群と呼ばれています。 かつて妊娠中毒症では、浮腫(むくみ)が重要な兆候の1つとされていましたが、現在は高血圧とたんぱく尿が重要な指標になっています。 妊娠高血圧症候群として妊娠が終了していったん兆候が消失しても、二人目の子供の妊娠時に再発する傾向は明らかにあるとされています。 また、妊娠高血圧症候群の発症者は、そののち長期にわたり高血圧を発症するリスクがあることもよく知られています。 ご質問者が一人目のお子さんを出産した後、高血圧が治ったのでなければ、”妊娠中毒症”ではなく、いわゆる一般的にいわれる”高血圧”へと 病気が移行したものと考えます。高血圧が持続すると、次回の妊娠時には再び妊娠高血圧症候群が出現して、さまざまに悪化することが知られています。

高血圧には種々の原因があります。その多くは「本態性高血圧症」で、遺伝的背景や環境因子で発症します。 しかし中には、腎疾患、甲状腺疾患、その他の内分泌疾患による高血圧などがあり、これらは 「二次性高血圧」と呼ばれており、 高血圧を主訴に来院された患者さんから前述の疾患が見つかる場合があります。 ご質問者は、浮腫が足にあるとのことですが、これらの二次性高血圧でも浮腫が顕著に現れることがあります。 また、浮腫自体は、下肢の静脈血栓(「深部静脈血栓」)でも起こり、静脈血栓は、「抗リン脂質抗体症候群」という自己免疫疾患などでも起こります。 血栓は、血管内にできる血液の塊で、この血栓が血管に詰まって血流が悪くなる状態を血栓症といいます。 血栓症と妊娠高血圧症候群との関連性も指摘されています。
ぜひ、まずは高血圧疾患の専門医(循環器内科、腎臓内科など)の受診をお勧めします。 また、過労や睡眠不足なども症状の悪化に関係します。子育てや介護のため十分な睡眠時間が取れないとのことですが、 日常生活を工夫してできるだけ体を休めることも大切です。

(この答えは、2017年4月現在のものです。医療は日々進歩しているため、後日変わることもあるのでご了承ください。)


posted by bishamon at 20:00| Comment(0) | 産婦人科